【怪我したら無収入?】トラックドライバーなら労災や私生活上での病気・怪我で長期欠勤しても生活は安心です。
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トラック運転手への転職を考えているけれども次のようなことが気になって二の足を踏んでいる人も多いのではないでしょうか?
- 肉代労働だし病気や怪我で欠勤した場合には生活できなくなるのではないか?
- そもそも危険な仕事で労災が多いんじゃないの?
- 怪我をしてトラックを運転できなくなると解雇されそうだ。
- 運送業はブラックだから労災の申請もしてくれないのではないか?
この記事はそんなあなたの悩みを解決する為に、運送業で20年以上総務・労務を担当している私が日本一詳しく解説しています。
この記事を読んでいただければ、トラック運転手が安心して働くことができる仕事であることが分かっていただけると思います。
採用うさぎと申します。現在、従業員が3,000人程度の運送業で総務・労務の仕事をしています。詳しいプロフィールはこちらです。
運送業に対する誤解が多い為このブログを立ち上げました。運送業の発展と皆さんの転職活動の参考になれば幸いです。
結論:トラック運転手が怪我・病気をしても収入は無くならない
トラック運転手で怪我、病気をしたとしても収入がゼロになることはありません。
もし全くトラックに乗れない体になったとしても、特に大企業では簡単にクビにできないため、トラック運転手以外の仕事をあてがわれることが多くあります。
- 労災ならば治療費と給与の保障がある
- 私傷病ならば傷病手当金で給与の保障がある
- トラックに乗れなくても他の部署で働くことができる
もし、けがや病気でトラックに乗れなくなってもたちまちお金がもらえなくなるわけではありません。
順に説明します。
労災になると治療費と給料の補填がある
労災の申請することによりどのような給付を受けることができるのでしょうか。
労災には主に6つの給付がありますが、ここでは治療費と休業した場合の給料の補填となる給付について説明します。
療養補償給付
療養補償給付は労災による怪我や病気についての給付金になります。
労災により病院にかかったとしても申請書を提出することにより治療費を払わなくてよくなる制度です。
救急車で運ばれた場合など申請書が間に合わない場合には、治療費の一部を払っておいて後日申請書を提出することにより、お金を返してもらうことが多いです。
これにより全額無料で診察、治療してもらえます。
休業補償給付
業務上の怪我や病気(通勤中の災害を含む)により就業できない場合に、事故があった前3か月の給与を平均した8割が支給される制度です。
しかし、休業補償給付が支給されるには法律で次の条件が定られています(労働者災害補償保険法第14条1項)。
- 業務上の事由または通勤による病気や怪我で療養中であること
- 労働することができない期間が4日以上であること
- 事業主から賃金を受けていないこと
条件①については迷うことは無いでしょう。
条件②について、休業補償給付は休業初日から3日目までは支給されません。
この3日間を待期期間と言います。
この待期期間は土・日・祝日・指定休日等を含めた日数になっていまるので、比較的条件を満たしやすいと言えるでしょう。
しかも、待機中の3日間ついても通勤災害の場合を除いて、会社は平均賃金の6割を支払う必要があります。
担当者の不勉強から支払われない場合があるので、必ず請求するようにしましょう。
条件③について、ここで言う賃金には有給も含まれるので注意が必要です。
つまり、会社からもらえるお金と傷病手当金の2重取りはできません。
休業補償給付があるおかげで、労災の場合は給料の8割程度が補償されるので、怪我や病気をしても無収入になることはありません。
次は実際の補償例を見ていきましょう。
病気や怪我でトラックに乗れない場合の補償例
労災による怪我でトラックに乗れなくなった場合
4月15日、荷下ろし中に荷崩れをおこし、荷物が足の上に落下。
右足の甲を骨折したため、1か月間トラックに乗れなり自宅療養となった。
職務中の事故なので、労働災害にあたり国から休業補償給付が受けられます。
休業補償給付の内容は、怪我をした月の前3か月の平均賃金の80%となります。
事例の場合、1月(40万円)・2月(45万円)・3月(35万円)とすれば、3か月の合計は120万円となります。
この120万円を3か月の暦日数(90日)で割ります。
約13,333円/日となります。
この金額の80%が補償額ですので、約10,666円/日となります。
この金額に休んでいた30日をかけると319,980円となります。
つまり、平均賃金が40万円程度の人は、大体32万円程度の補償を受けることができます。
実際は、もう少し細かい計算だったり、3日間の待期期間があったりしますので、少し金額が異なりますが、大体の感覚はつかんでいただけると思います。
さらに休業補償給付の非課税である為、毎月の手取り金額とあまり変わらない金額をもらえることになります。
通勤時の怪我も補償される
運送業特有のものではありませんが、通勤途中にけがをしたものであっても通勤災害として、労災申請が可能です。
例えば通勤途中に駅の階段から転落して足をねんざしたような場合や、自転車通勤時に転倒して骨折したような場合にも通勤災害として労災申請ができることは覚えておきましょう。
この場合も平均賃金の8割が補償さるので、無収入になる心配はありません。
このように手厚い労災給付ですが、運送業はブラックだから労災隠しをしていると思われているようです。
ここからはその誤解を解いていきます。
運送業が労災を隠すと誤解される理由4選
トラック運送業はブラック企業だから労災になっても隠されて対応してもらえないんじゃないかと心配な方もいらっしゃるかと思います。
労災を隠すであろう主な理由は次の通りです。
- 下請け企業は荷主の敷地内で労災があれば契約が切られる恐れを感じている
- 労災を申請すると保険料が高くなる
- 労災が頻発すると労働基準監督署の監査対象になる
- 担当者の知識不足や手抜き
順番に解説していきます。
1.客先での労災は下請け契約が打ち切られるから
下請け契約の打ち切りが怖くて労災隠しが行われていると言われています。
しかし実際は、下請け企業が構内で労災事故を起こしても契約を打ち切ることはありません。
私が勤める会社でも多くの傭車(下請けのトラック運送会社のこと)と契約しており、労災が起こったことが何度もありますが、契約を打ち切る話が出たことは一度もありません。
逆にこのような理由で契約を打ち切ったとなれば、業界内での信用を大きく失墜させることになります。
2.労災保険料が高くなるから
確かに労災が続けば労災保険料が最大で40パーセント高くなり経営者にはデメリットになります。
しかし、労災隠しは50万円以下の罰金という刑事罰を受けることになります。
刑事罰を受けたというような噂は業界内ですぐに広まり、顧客との取引にも悪影響を与えるため、天秤にかけた場合これを受け入れる事業者はいないでしょう。
3.労働基準監督署の監査対象となるから
監査対象となることを避けるために、労災申請をしないと考えられていることも多くあります。
しかし実際は労災事故でも死亡事故や重篤な障害が残るような事故でもない限り、ほとんど監査が入ることはありません。
私の勤める会社でも毎年に数回の労災事故が起こっていますが、監督署の監査が入ったことは一度もありません。
この20年間で監督署の監査が入ったのは、フォークリフト転落での死亡事故があったときのみです。
4.労災申請がされない一番の理由は担当者の怠慢
労災申請は、特定の用紙に「いつ、どこで、だれが、どのようにして、どんな災害がおこった」ことを書き、所長や社長の押印をもらう必要があります。
専属の総務・労務担当者がいるような比較的大きな会社は別として、比較的小さな会社や、大きな会社でも小規模な事業所などでは他の業務で多忙のため、いろんな理由をつけて労災の手続きをしてくれないことがあります。
このように労災を申請することは会社にとっても大きなデメリットはありません。
遠慮することなく申請をしましょう。
もし申請を断ってくるようなら、そのような会社はブラック企業確定です。
収入が無くなる前に転職しましょう。
職務外の病気怪我の場合は傷病手当金がもらえる
職務外の病気・ケガで長期欠勤したとしても不安に感じることはありません。
トラック運転手として会社に勤める場合社会保険に加入することになります。
まれに、社会保険に加入させてくれない会社もありますが、転職対象にしてはいけません。
社会保険に加入している場合、傷病手当金として平均賃金の約6割程度の金額が支給されます。
具体的には次のような感じになります。
職務外の怪我・病気の場合
4月15日、自宅の階段で転倒し、右足の甲を骨折したため、1か月間トラックに乗れなり自宅療養となった。
傷病手当金の内容は、怪我をした月の前3か月の平均賃金の60%となります。
前段の人と同じ給料の場合と同じ平均賃金で計算すると、
約13,333円/日となります。
この金額の60%が補償額ですので、約8,000円/日となります。
この金額に休んでいた30日をかけると240,000円となります。
つまり、平均賃金が40万円程度の人は、大体24万円程度の補償を受けることができます。
実際は、もう少し細かい計算だったり、3日間の待期期間があったりしますので、少し金額が異なりますが、大体の感覚はつかんでいただけると思います。
労災の場合と比べると少し見劣りする感じがしますが、私的な病気や怪我でも収入が無くならないのはありがたいですね。
このように、労災や私的な病気怪我を負ったとしても収入が無くなるわけではありません。
とはいえ、労災が頻発するような職場であれば労働意欲もそがれてしまいます。
それでは、トラック運転手に多い労災とはどのようなものがあるのでしょうか。
トラック運転手に多い労災3選
トラック運転手と言えば、もちろんトラックを運転して荷物を運ぶことが仕事ですが、意外にも運転中に労災が起こることはほどんどありません。
トラックはとても頑強につくられており、ある程度の事故ならばかすり傷一つ追わずに済むことが多いのです。
では、どのような場合に労災が起こっているのか私の会社で起こった事例をご紹介します。
1.荷台やホームからの飛び降り、落下
事例1:トラック荷台からの飛び降り
AさんはB会商店への配達を終えた後、C商店への配達に向かう前にトラックの荷台の中で荷物の組み換え作業を行っていました。
組み換え作業を終えトラックの荷台から降りる際に飛び降りましたが、飛び降りた先に小さな木片があったことで着地のバランスを崩し転倒、足の小指を骨折し1か月間の休職となった。
事例2:荷捌きホーム上からの落下
Aさんは自社のホーム上でトラックへの積み込み作業を行っていました。
トラックとホームの間に鉄板を敷いて、台車を荷台に進入させるための橋渡しにしていたところ、台車の車輪が鉄板を踏み外し引っ張られる形で自身もホーム下に落下して肩を骨折。
3週間の休職が必要となりました。
2.荷崩れによる怪我
事例1:荷物を積む順番を間違えことによる荷崩れ
Aさんは荷物の積み付けの際には、重い荷物を下に軽い荷物は上に積むという指導を受けていたにも関わらず、配達の順番を考え、重い荷物を上に積んでいました。
数件の配達を終えると、荷台内に隙間が発生したため重い上荷が落下し、荷物を守ろうと体で受け止めたので鎖骨と胸骨を骨折し1か月の休職が必要となりました。
事例2:ラップの巻きが甘かったためパレット上部の荷物が落下
Aさんは複数荷主の荷物を1パレットにまとめて、ハンドリフトで移動させていました。
面が合わなかった荷物の1個をパレットにまとめた荷物の上部に乗せ、その部分にはラップを巻いていなかったため、トラック荷台に乗せる際の段差で荷物が転落。
頭部に裂傷を負い2週間の休職が必要となりました。
3.フォークリフトに関係する労災
後退するフォークリフトとの接触による労災
Aさんは自社のホーム上でトラックに荷物を積み込むべく、仕分け作業をしていました。
荷物を持ち上げようとしたところ、思っていたより荷物が重く後ろによろけたところにフォークリフトと衝突し肋骨を骨折。全治1か月の治療を要することとなりました。
フォークリフト転落による労災
Aさんは会社で禁じられているにも関わらず、フォークリフトでトラックの荷台内部に乗りいれて積み込みをしていました。
トラックのサイドブレーキが甘く、車輪の輪留めもしていなかったので、乗り入れ時にトラックが動いてしまい、トラックとホームの間にフォークリフトごと転落しました。
これにより大腿骨を骨折し、全治二か月の休職となりました。
トラック運転手は労災が頻発する危険な仕事ではありません。私が勤める会社でも怪我が原因でトラックに乗れなくなった人はいません。
しかし、万が一トラックに乗れない体になって収入が無くなるわけではありません。
けがや病気でトラックに乗れなくなっても他部門で働ける
数か月程度の病気怪我で復帰できる場合は、上記の通り、補償金をもらいながら復帰に備えることができます。しかし、大けがをしてトラックに乗れなくなった場合はどうなるのでしょうか?
トラックドライバーとして採用されたから、解雇されてしまうのでしょうか?
ごく一部のブラック企業は別として、基本的に従業員を解雇することはありません。希望を出すことにより、他部門で働くことができます。
荷扱い作業員・リフトマンとして働く
会社の脳ドックで疾患が見つかり、運転中に意識を失う可能性があると判断されました。
トラック乗務員としては危険があるため、降車することとなりましたが、乗務員の経験を活かし大型トラックへの積み込み作業員として、月給40万円程度で活躍されています。
運送業の仕事は、トラックドライバーだけではありません。荷物を仕分ける人・大型トラックに積み込む人がいます。
運送業界は常に人手不足なので、これらの部署で働くことが可能です。
管理側の職務に就く
高血圧による心疾患により、長時間の緊張状態が続くトラックドライバーとしては勤務できなくなりました。
運行管理者の資格を持っていた為、トラックの配車を管理する業務の係長として、月給35万円程度で活躍されています。経験を積み、月給40万円程度の課長職を目指されています。
体を動かす仕事ではなく、頭を動かして働く方法です。
運送業では、トラックの配車・乗務員の点呼を行う仕事があります。配車課・集配課・輸送課などと呼ばれています。
こちらの仕事は、現場職の給与体制である職能制・技能制(配達件数・集荷件数等により給料が変わる)とは異なり、固定給になることが多いです。
一般の会社員と同様に、平社員→係長→課長というように出世しながら給料を増やしていきます。
管理職になるには、「運行管理者」になる必要があります。
合格率は、2022年で30.7%と、正しく努力すれば合格できるレベルです。
運行管理者の資格は、社内で評価されるだけでなく転職にも有利になる為ぜひとも取得しておきたい資格です。
この記事の結論
トラックドライバーは、一般的な事務職と比べると確かに労災が起こりやすい職種ではあります。
しかし、怪我をしたからと言って無収入になり生活ができなくなるものでも、仕事が無くなるわけでもありません。
ただし、ごく少数のブラック企業に当たってしまった場合は劣悪な環境で働かされるため転職の際には注意が必要です。
ブラック運送業の見極め方についてはこちらの記事を参照にしてください。
また運送業界に所属している以上、トラック運転手をすべての人にお勧めしたいところですが、どうしても向いていない人、もったいない人は存在します。
トラック運転手にはもったいない人はこちらの記事を参考にしてください。
転職する際にはアドバイザーが必要です。応募する企業がブラック運送業かの判断ができない場合は、転職エージェントを利用するのが良いでしょう。